プライムパートナー 大野順弘コラム

ビジネスに係わる面白話しを中心に書いてます

大学生に何を伝えるか

先日、静岡市常葉大の学生さん向けに会社選びについて話しをしてほしいとの要請があり、約1時間半の特別講義をさせて頂いた。

 対象は主に大学2年生の生徒さん50人。就活にはまだ早い時期だし、授業以外はクラブ活動やバイトで忙しい若者に何を伝えようかといろいろ悩んだ挙句、以下の主旨のレジメを作成して思いっきり熱く語ってみた。

  • 1964年の東京オリンピックの時代から2019年までの経済状況と学生の就職人気ランキングの変遷を解説した。例えば、1964年は化学や繊維企業の人気が高く、1985年の自分の就活時代は日本IBMなどコンピューターメーカーの人気が高かったが、今ではGoogleなどIT企業の人気が高いなど、常に上位企業は入れ替わっていく。
  • 経済の変動やテクノロジーの進化により、現在の価値観は30年後には全く別の価値観になっている。
  • 自分の就活時代には、ソフトバンクもアマゾンもユニクロもなかった。つまり、現時点では想像できない優良企業が将来も誕生していくだろう。
  • だから、新たな変化の波にうまく乗り切れる「生きテク」を身に着けてほしい。社会人になっても、自分磨きをしていくことが大切である。
  • 皆さんが、今熱中している事やこれから経験する仕事が、いつか点と点で繋がることがある。一つの仕事を大成した時に、感じる瞬間だろう。だから、どんな仕事を選択しても、その仕事をまずは一生懸命に取り組んで欲しい。(点と点が繋がるという内容は、ステーブジョブズの講演から引用した)

 

ランチ後の授業だったので、居眠りする生徒さんがいるのではと心配していたが、質問すると手を挙げて応えてくれる生徒さんや熱心に聞き入る女子生徒さんも多かった。グループで「生きテク」で必要なスキルとは何だろうというグループ討議も楽しそうに取り組んでくれた。

常葉大学の草薙キャンパスは、私の子供の頃に住んでいた小糸製作所の社宅からほど近く、何とも地元の後輩に少しでも役に立てたかもという気持ちで帰路についた。

技術立国日本は復活できるのか?

 いよいよ「平成」がもう少しで終わります。そこで、今回と次回は、私なりに平成という時代を振り返ってみたいと思います。

 先日たまたまアマゾンのプライムビデオで、17年前に放送されたプロジェクトX「国産コンピューター ゼロからの大逆転」を観ました。  富士通でコンピューター開発をした池田敏雄氏の物語です。とにかく感動しました。天才技術者池田氏は、研究に没頭すると遅刻や無断欠勤する問題社員でした。休んで河原に行って自作の模型飛行機を飛ばすなど逸話も多いですが、当時世界を席巻していたIBMよりも性能が高いコンピューターを開発し、富士通を一流企業に押し上げた立役者でした。

 昭和には、このような気概のある技術者が沢山いて、日本の製造業を創ってきました。シャープしかりパイオニア東芝しかりです。しかし、平成の時代は製造業が徐々に没落し、台湾や中国企業などに買収される衰退期となってしまいました。技術立国日本は復活できるのでしょうか?

 現在はコンプライアンスや服務規程などで池田氏のような自由な社員が活躍しにくい時代です。グーグルのような企業文化を日本の経営者は参考にし、新しい元号の時代には、是非とも再生して欲しいと願っています。

300万円で会社は買えない

 2018年に「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本が売れました。タイトルに惹かれ本屋で手に取った方も多いと思います。

 中小企業の経営者の平均年齢は60歳台後半になっており、事業承継の一つとして第三者に会社を売却する選択肢が増えています。まさに小規模M&Aが注目されています。

  この本が売れた背景は、一般の方々に「M&Aが身近なものだ」と思わせたことと「僅か300万円程度で企業のオーナーになれる」という幻想を読者に抱かせたことだと考えています。

 サラリーマンは50歳以降になると役職定年やグループ会社への出向などもあり、会社人生に憂き目を見ている人は少なくないと思います。今さら脱サラして起業する勇気はないし、他社へ転職するのは簡単でないと考える人にとって、こんな選択肢があったのかと強い関心を持たれたことでしょう。

  さて、実際に会社を300万円で買うことができるでしょうか。

答えは、「イエス」です。

 買収対象企業のキャッシュフローや資産状況などを検討した結果、売り方と買い方の双方が売買金額に納得すれば、その金額で株式を買い取る事は可能だと思います。

  では、300万円以外にお金はかからないでしょうか?

 答えは、「多額にかかります」です。

 

 実際は、買収企業の会計や税務が正しいか、法的に問題ないか、ビジネス上でリスクはないかなどを専門家に依頼して精査するための費用がかかります。これをデューデリジェンス費用と言います。金額は数十万円から数百万円まで千差万別です。さらに、買収先企業を紹介してくれたアドバイザーへの報酬支払などもあります。

 つまり、300万円で会社を買うためには、それ以外の多額の費用がかかるわけです。

  忘れていけないことが、もう一点あります。買収先企業の有利子負債です。もし、買おうと思った企業が金融機関から借入をしている場合は、新しいオーナーが債務を個人保証しなければならないケースが考えられます。借入金が1千万あった場合、たとえ300万円で会社を買っても、1千万円の潜在的な借金を抱えることになるわけです。

 

 以上、一般のサラリーマンがM&Aに係わる難しさをお伝えしましたが、専門家に相談することでスムーズは事業引継ぎができる事例も増えつつあります。

 新たに会社のオーナーになりたい方は、是非ともチャレンジして欲しいものです。

東京地検特捜部からの電話

 カルロス・ゴーン被告が逮捕された事件は、世間を驚かせました。これから事件の真相が明らかになっていくと思います。

 今回、逮捕に動いたのは政治家汚職、脱税、経済事件などを独自に捜査する「日本最強の捜査機関」とも呼ばれている東京地検特捜部です。

一般的に東京地検特捜部という名前を聞いたことがあっても、なかなか普段の生活で係わる事はないと思います。

 実は私、東京地検特捜部から捜査協力を依頼された経験を持っています。その体験談を今回お話ししたいと思います。

  以前の会社で働いている時に一本の電話がありました。電話を取ると、「東京地検の〇〇ですが、以前〇〇株式会社の株式鑑定評価をされましたね。お話しをお聞きしたいので、東京地検までいらして下さい。」

 突然の電話に動揺しました。詳しい話しを聞いてみると、〇〇株式会社の増資に関して詐欺事件が起き、その捜査をしている中で、自分が作成した株式鑑定評価書が詐欺に使われたとの内容でした。

  出頭日が来ました。重い足取りで永田町に向かいます。東京地検の入り口は厳重な警備に守られていましたが、ビルに入ると一転、静寂と薄明りの広がる別世界でした。色が一切ないモノトーンの暗い廊下が続きます。シーンと静まりかえっていて誰一人歩いていません。ビルにいるだけで気持ちが沈んでいきました。この独特の雰囲気は妙に孤独感と不安感を掻き立てます。

 指定された部屋番号に着いて中に入ると、小部屋には検事と書記の2名が待っていました。私の緊張した様子を察したのか検事は笑顔で、「捜査にご協力ありがとうございます。大野さんが作成された株式鑑定評価書の内容を知りたかったのです。あくまで株式鑑定の方法を勉強したいと言うのが趣旨です。詐欺事件と無縁なことはわかっていますよ。」

 それを聞いて安堵感に包まれました。1時間ほど無我夢中で株式評価の方法論を検事に説明したと思います。東京地検のビルを出るときは、二度とここには来たくないと強く思いました。

 

 今から思い返すと、東京地検が与える異様な恐怖感は一種の演出効果が施されているからでないかと考えています。大物政治家や経営者と云えども一人になれば意外と弱いものです。東京地検特捜部の厳しい追及に耐えるのは大変な事です。今後、ゴーン被告の供述に注目したいと思います。

早朝のラジオ番組は一聴の価値あり

    皆さんは、今でもラジオを聴いていますか?

 このような質問をすると、多くの方は「今はもう聴かなくなった」と答えるのではないでしょうか。

 実を申しますと、私は大のラジオフアンです。毎日2時間近くは聴いているヘビーユーザーなのです。特に朝のラジオ番組はビジネスマンに取って隠された情報の宝庫だと思っています。TBSラジオ、文化放送ニッポン放送の早朝番組を今回お勧めしたいと思います。

 1.TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」 午前5時から6時半 

    生島ヒロシの個性が発揮される長寿番組です。健康情報が満載で、順天堂大学の小林教授や諏訪中央病院の鎌田先生などテレビでも有名な医者が沢山出てきて健康情報を伝えてくれます。文化情報も充実していて、山本益博のグルメ情報や温泉観光情報、最新映画情報などもあります。経済情報では、森永卓郎寺島実郎などの解説者が登場します。

2.文化放送おはよう寺ちゃん活動中」 午前5時から7時 

    経済情報にとにかく強い番組で、日替わりで経済の専門家が出演します。その他、雑誌の紹介コーナーがあります。特に毎週木曜日は、週刊新潮週刊文春の発売日なので、週刊新潮はデスククラスの方が出演して読みどころの解説をし、週刊文春は新谷編集長がスクープ情報を解説します。競合する2社が同じ番組に出て、相手の悪口を言うのも聞きどころです。

3.ニッポン放送飯田浩司のOK!Cozy up!」 午前6時から8時 

    文化放送に対抗するように、最近この時間帯に夕方枠から引っ越して来た政治経済情報番組です。日替わりのコメンテーターは癖が強く、須田慎一郎や高橋洋一など歯に衣着せぬ解説者が多いです。司会の飯田アナはまだ30代ですが非常によく勉強していて感心します。

    以上の番組は時間帯が重なっていますが、チューナーダイヤルを回しながら聴き比べています。聴き終わると不思議に政界情勢や経済動向については専門家になったような気がします。

   もし、ご関心を持たれたら、久し振りにラジオの電源を入れてみませんか。

香港・広州間の鉄道路線に思う

 最近、在来線で約2時間かかっていた香港-広州間に新たな高速鉄道が開通し、最短47分で結ばれるとのニュースが報じられました。

 1998年の8月、私は夏休みを利用し香港からこの路線に乗って広州に辿り着きました。当時、中国へ渡航するにはビザが必要であり、香港でビザを申請して中国へ入国するというルートが主流だった時代です。ゆっくり走る汽車から眺める車窓に長閑な農村が広がっていました。紙に包まれた白米と少量のおかずの入った弁当売りが車輛を行き来していたことを妙に思い出します。

 「30年も経つんだなぁ」、流線型の最新車輛が広州駅に滑り込む映像をテレビで見ながら、思わず呟きました。

 広州駅では、現地ガイドをしていた中国人K氏が笑顔で出迎えてくれました。日本人旅行者が少なかった時代、同年代のK氏とはすぐに仲良くなりました。当時の広州は目新しい観光地が無く、市場巡りや食事、ボーリングなど滞在中はずっと付き合ってくれました。

 K氏はその後旅行会社でお金を貯めて、日本の大学に留学しました。ビジネスの才覚があり、短期間でゲーム流通の事業を起業し成功させました。今はオーナーとして会社の経営を部下に任せ、一年の半分は世界中を旅しています。フェイスブックで確認すると、直近はシドニーにいるらしいです。

 たまに彼と会うと、「大野さん、広州は30年前とは比べものにならないほど発展したよ。是非とも、一度遊びに来てよ」と言われます。

  来年こそは香港経由で広州に行く同じルートを辿り、経済大国となった中国を体感してみたくなりました。

 

さくらももこさんに学ぶ

 私は自己紹介をするとき、「出身地は清水です」という事にしています。清水市市町村合併静岡市に統合されてしまったので、「静岡です」が正確な表現だと思いますが、妙に清水に対し誇りのようなものを持っています。その一番の理由は、「ちびまる子ちゃん」の町だからです。初対面の方に「あのちびまる子ちゃんの舞台になった町で子供時代を過ごしました」と話すと打ち解けるのが早い気がしています。

 「ちびまる子ちゃん」は「サザエさん」と並び、国民的なアニメとして不動の地位を築きました。小学校3年生のまる子を主人公にし、多くのユニークなキャラクターが登場します。昭和40年代の世界観を描いているのに係わらず、未だに老若男女問わず人気が衰えません。その作者であるさくらももこさんが先日若くして亡くなりました。

 

 実は、今までさくらももこさんに対しては、「清水を有名にしてくれた漫画家さん」程度の認識でした。亡くなって初めてさくらももこさんという方に興味を抱き、どんな人生を歩んだ方なのか調べ始めてみると、広い清水の中でも驚くほど近い生活範囲で暮らしていたことがわかったのです。歩いて行けるほど近い場所で同じ時代を過ごしていました。多分、紙芝居屋が来た入江岡の淡島神社や狐ヶ崎ヤングランド、はごろも社のシーチキン工場近くですれ違っていたかも知れないと思うと親しみを持たずにはいられなくなりました。

  不思議なのは「ちびまる子ちゃん」を観るたびに湧き出る郷愁感は、ほぼ同じ世代、同じ地域を共有している私特有のものでなく、多くの方々がお持ちだということです。出身地がどこであっても自分の故郷と重ね合わせ、小学校時代を思い浮かべながら視聴しているのです。

  改めて、さくらももこさんのことを尊敬します。そして、彼女の類まれな能力を分析すると以下の4点でないかと思っています。

  1. 身近な日常を数センチ単位でとらえる観察力
  2. 周りで起こる様々な出来事を残す記録力
  3. 人に対する興味と愛情力
  4. そして、誰にも共感される表現力

  これらの能力は、仕事をする上でも参考にしたい内容です。今後も清水出身であることを誇りに生きていこうと思います。