プライムパートナー 大野順弘コラム

ビジネスに係わる面白話しを中心に書いてます

東京地検特捜部からの電話

 カルロス・ゴーン被告が逮捕された事件は、世間を驚かせました。これから事件の真相が明らかになっていくと思います。

 今回、逮捕に動いたのは政治家汚職、脱税、経済事件などを独自に捜査する「日本最強の捜査機関」とも呼ばれている東京地検特捜部です。

一般的に東京地検特捜部という名前を聞いたことがあっても、なかなか普段の生活で係わる事はないと思います。

 実は私、東京地検特捜部から捜査協力を依頼された経験を持っています。その体験談を今回お話ししたいと思います。

  以前の会社で働いている時に一本の電話がありました。電話を取ると、「東京地検の〇〇ですが、以前〇〇株式会社の株式鑑定評価をされましたね。お話しをお聞きしたいので、東京地検までいらして下さい。」

 突然の電話に動揺しました。詳しい話しを聞いてみると、〇〇株式会社の増資に関して詐欺事件が起き、その捜査をしている中で、自分が作成した株式鑑定評価書が詐欺に使われたとの内容でした。

  出頭日が来ました。重い足取りで永田町に向かいます。東京地検の入り口は厳重な警備に守られていましたが、ビルに入ると一転、静寂と薄明りの広がる別世界でした。色が一切ないモノトーンの暗い廊下が続きます。シーンと静まりかえっていて誰一人歩いていません。ビルにいるだけで気持ちが沈んでいきました。この独特の雰囲気は妙に孤独感と不安感を掻き立てます。

 指定された部屋番号に着いて中に入ると、小部屋には検事と書記の2名が待っていました。私の緊張した様子を察したのか検事は笑顔で、「捜査にご協力ありがとうございます。大野さんが作成された株式鑑定評価書の内容を知りたかったのです。あくまで株式鑑定の方法を勉強したいと言うのが趣旨です。詐欺事件と無縁なことはわかっていますよ。」

 それを聞いて安堵感に包まれました。1時間ほど無我夢中で株式評価の方法論を検事に説明したと思います。東京地検のビルを出るときは、二度とここには来たくないと強く思いました。

 

 今から思い返すと、東京地検が与える異様な恐怖感は一種の演出効果が施されているからでないかと考えています。大物政治家や経営者と云えども一人になれば意外と弱いものです。東京地検特捜部の厳しい追及に耐えるのは大変な事です。今後、ゴーン被告の供述に注目したいと思います。