プライムパートナー 大野順弘コラム

ビジネスに係わる面白話しを中心に書いてます

最後まで諦めない

 私の信条で大切にしているのは常に「最後まで諦めない」ことです。いい意味では意志が固く初志貫徹と言えますが、一方では悪あがきで執念深いとも捉えられます。

  2011年、大和総研で人事コンサルティング部門を担当している時に、大手企業からグローバル人材の人事制度構築についての提案依頼が来ました。当時グローバル人事制度には全く経験値がなかったコンサルタント集団でしたが、世の中は外国人社員の雇用が増えつつある時代が到来していました。「この案件を何とか受注し、この分野を伸ばしていきたい」という思いがあり、かなり気合をいれました。海外勤務経験がある人材やMBAホルダー人材達にもチームへ加わってもらい、全員の知恵を結集して何とか提案書を仕上げました。

 そんな時にあの東日本大地震が発生したのです。震災が起きたのが3月11日の金曜日、プレゼンは次の月曜日午前10時でした。場所は埼玉県川口方面です。私を含めた訪問予定メンバー3名の中で近くに住む者は誰もおりませんでした。

 「本当に当日行けるのだろうか」という不安を抱えながら、月曜の朝を迎えました。それまで何度かプレゼン日の延期を申し入れようかと迷いました。案の定、月曜は早朝から交通機関はマヒ状態で、電車遅れや運休などで大混乱です。通常ではとても間に合いそうにありません。諦めかけていた時、奇跡的にタクシーをつかまえる事ができたのです。残り2名のメンバーを赤羽でピックアップし、何とかギリギリ午前10時に辿り着くことができました。

 出社している社員もまばらの中で常務が出てきて、「よくこんな大変な時に来てくださいましたね。他社さんは来られないと連絡がありましたので、今日のプレゼンは御社1社だけです」とにこやかに対応して頂きました。

 プレゼンを終えると、「ハイヤーを用意しましたのでお車で帰ってください」と言われ恐縮しながら帰ったことを思い出します。結果、見事に受注できました。後から聞いたところ人事コンサルでは名だたる企業数社がコンペ相手だと知り、よくぞ勝てたものだと胸を撫でおろしたものです。

 昔から「営業は晴れた時に訪問するよりも雨の時に訪問しろ」という教訓のような根性論があります。そもそも根性論は嫌いですが、熱意は相手に伝わるものだと身をもって感じた体験でした。身の危険を顧みずにリスクをおかすのは誤りです。しかしながら、「自分達ができる最大限の努力を発揮し最後まで諦めずやってみること」で得られた成功体験は貴重なものでした。